ノベルギア ぺるるんのへっぽこ小説マガジン

無理のないはんちゅうで、当たり障りのない小説を書いていきたいです…!ジャンルは、SF系・ファンタジック系・お笑い系が得意なんですが…。なろう小説でやれ!なんて言わないで(笑)

【小説】 クルセイダーウォーズ 第1話

 

 

はじめに


これは、戦争を題材にした半分二次創作の多作品クロスオーバー小説です。各作品の原作者様、出版社様とは一切の関係はございません。また自分はほとんど素人の初心者なので、版権キャラには特にキャラ崩壊などが目立つ場合があります。またオリジナルのキャラクターも登場します。度々実在のお菓子や企業・団体、実在する町など登場しますが、これも許可・タイアップ等はしておらず全て非公式で明記してあります。なお冒頭は実在の事件等が書かれていますが、それ以外はストーリーの部分のみフィクションです。

プロローグ


2019年の事です。この時代はとてもシビヤな年で、私の中では印象深く記憶に残っています。重要だったのが…当時の明仁天皇陛下天皇の位から退いて、平成という元号が終わった事でしょう。ああ、あなたから見れば、平成なんて大昔のことでしか思えないんでしたっけ、私たちにとっての昭和時代みたいな…とにかく韓国と北朝鮮の仲が良かったですね。金正恩があれほどソウルを火の海にするとか、我が国が朝鮮半島を統一すれば超大国になるとか、すごく緊迫していた状況を融和的に解決しようと努力した、あの文在寅の雄姿には逆に呆れていました(笑)なんて言っても文さんは直ぐに韓国国民の反感を買い、逮捕されて刑務所にぶち込まれましたがね…。それよりも恐かったのが香港の反政府デモです。香港政府の通達で、香港市内で逮捕された容疑者の身柄を『中国本土の収容所へ引き渡す事のできる法例』を真っ向から反対した市民により、香港の自由をかけた泥沼の惨劇となり、 当時のTwitterには香港の健闘を願った『香港加油!』というツイートが相次いで投稿されました。その中で印象に残った画像があり、それは今でも忘れません。
『台湾人よ!戦いに敗れた我々香港人の屍を踏み越えて、意地でも中国の脅威から逃げろ!』
もちろん中国語で書いてあり、その日本語訳を読んだだけです。しかし来る2047年にその一国二制度という物は完全に撤廃され、今の香港に当時の様な言論の自由・文化の自由はもうありません。昔話を聞きに来たけど…違う、そうじゃない? わかりました、ここだけの話ですね!

それは3人の若い兵士のお話。友情を深めながら時に衝突し、世界の平和に命を投げうった、『三核同盟友軍“TayMer”』の記録です。

それは例の航空機事故がきっかけだった。


『ヒューーン…ズガァーン!!』
午前9時ごろの事、日本海沿岸を飛行していた旅客機が原因不明の爆発をおこして墜落した!その第一報はすぐさまNHK、各民放で報道特別番組を組んで放送される…
『たった今、東亜日本航空123便ソウル行きの機体が日本海の韓国釜山付近でレーダーから消え、消息をたちました。』
対馬市の住民からは、爆発しながら墜落する所を目撃したという情報が入っています。』
その時、僕は小さな町工場で箱折りを淡々とやらされていたため、その事実を知るのは夕方頃の事だった。そして仕事が終わり、ゆううつな顔を引っさげながら自宅へ帰る。お腹が空いていたからか、コンビニで買ってきたポップコーンの大盛りを無我夢中に封を開け、頬張ろうとした…しかし無意識にテレビをつけると例の墜落事故のニュースが写っていて、ポップコーンが口に入らなくなった。どうやら激しく爆発するように散っていったとか、まるで墜落じゃないじゃん!という話がどのチャンネルでも繰り返されていた。
『そしたら撃墜されたんじゃないかな?』
生まれつき勘が鋭い僕はこんな事呟く。しかし、あんなでっかい発動機の中には膨大な量の石油が収められているから、理論上自発的に爆発できる…分からなくなってきた!仕方なく考えるのをやめ、寝っ転がった。とその時、とある友達から電話が掛かってきた!
『シャーマンくん…なんだこんな時に!』
シャーマン君は一応僕と仲がいい友達だ。この子はモデルガンをたくさん所持していて、アメリカ軍を支持している軍事オタクだ。どうしたんだろう…
『照順くん、何か大変なことになっちゃったね…すこし怖くなったから電話したけど、いい?』
シャーマン君は今のニュースに怯え気味で、思い立って電話して来たそうだ。僕は友達と話がしたかったから丁度いい。
『今のニュースでしょ?大丈夫…すごく不思議な事件だよね』
僕はさり気なくシャーマンにしゃべった。それにシャーマンは同情する様に応える
『うん、実は…今の事件で俺の友達がなくなったんだ。飛行機って事故が起こると怖いから…』
それは悲しい報せだ。僕は虚しいシャーマンの気分を察して、今日は早く休むことを促した。
『とりあえず僕に話すことは良いけど、そこまで元気がないなら明日にまた電話してもいいよ…』
と言うと、シャーマン君はなぜからしくないことを申し出た!
『とりあえず、詳しいことを会って話したいから…明日、秋葉原メイドカフェでも一緒に行かない?』
それに改めて何かあったんだな、と察して僕はシャーマン君と翌日秋葉原へ行く事にする。待てよ?あいつ、メイドカフェなんて好む柄じゃないよな。シャーマン君は日系4世のアメリカ人で、キャピキャピした会話を主体とするお店は好きじゃない。何か裏があるのかな…気にしない事にしよう!

メイドカフェでの暗黙


その翌日、僕は秋葉原の駅前でラジオを険しい気持ちで聞いていた。東亜日本航空123便はそのブラックボックスが見つからないという報せが入っている。日本海の真ん中だから当たり前だけど、墜落からまだ一晩たっただけで探す猶予はある様だ。シャーマンくんが来た。だけど昨日の電話とは少し様子がちがう、キリッとした表情だ。死んだ友達はどうした?
『照順くーん!ハロー!』
無我夢中でラジオを聞いていて、シャーマンくんの返事に気が付かない。ヘッドホンを外す気もなく、スマートフォンTwitterを開いてしまう。シャーマンくんはさすがにうんざりし、スマホを手から一切離さず険しい目で見つめる僕の耳元へコルト・ガバメントのモデルガンを突き出す。
『照順くん…無視するのか?ワッツアップ?』
『シャーマンくん?!ごめん…』
ラジオ好きの僕だ。腹が立ったシャーマンくんに多少びっくりした表情を晒し、ヘッドホンを耳からもぎ取る。本当に大事な話があるようで今すぐメイドカフェへ行く様、僕を誘導した。
『あの飛行機事故の検証を急ぐには、メイドカフェのきつねさんと話す必要がある。あの人に聞けば、最低限の事は教えてくれるはず!』
『オーケーシャーマン、ラジャー!』
僕の知らない表情で告げるシャーマンに唖然しながら、秋葉原の大手メイドカフェ『@ピンクカフェ』へ入店する…
『お帰りなさいませ、ご主人様!』
という号令がこのお店の名物。その後シャーマンくんはとある見習いメイドの女の子へ、何故か暗黙にアイコンタクトを取るような仕草をしてお互いグットサインをした!その人はあのトップアイドルの中核、霧矢あおいと瓜二つである。霧矢あおいによく似たその人は、その後なんのためらいもなく僕達を席に案内し済ました態度で挨拶を交わした。
『初めまして、6階新米メイドのあおいです!ふふっひ♡』
あおいという源氏名にフフッヒ♡という決め文句…僕はとっさに怯えた。霧矢あおいじゃん…しかしついさっきこの人と暗黙の了解を交わしたシャーマンは、やはり面識があるように会話を始める。初めにシャーマンが口を開いた!
『あの墜落事故にびっくりしたから、とっさにあおいさんを思い出して…』
『あれ何かの陰謀だよ(笑)とりあえずこここじゃあ話せないから、楽しんでって!』
あおいさんは、その話を取り下げて僕達に萌ウォーターという不思議な飲料水を差し出し、作業へ戻った。こいつ、いつの間に推しメイドなんか作ってやがる!?と突っ込みたくなったがその咄嗟に口を開くシャーマン。
『何にも考えなくていいよ…?ただ落ち込んでここに来ただけだから。』
 そうか、確かに今、また落ち込んだ表情を示してる。僕もしょぼくれてしまったらくだらない事になる、励まそう!
『シャーマン、この後エアガンショップ行こう!グロックの18番が欲しいな。』
『いいよ。ちょうど行きたいって思ってたんだ』
僕の気遣いが正解だったみたい。少し力抜いてシャーマンはパフェを嗜むのだった。

対策をねるあおい


その裏であおいさんは澄ました顔から一転して不審にソワソワし始めた。そばにはきつねと言うメイドさんがいて、彼女は慎重な態度をとって、きつねさんに自分が悩んでいたことを投げかけるのだった!
『きつね先輩、ちょっといいですか…?』
『なにあおいちゃん?いきなり怖い顔して…』
実はあおいとシャーマン、事前にTwitterを介して打ち合わせをしていた。それは共産主義的な思想を掲げ、世界征服を狙うとあるテロリストの話だった。それであおいは18年前に計画が開始された『民間人特別軍事徴兵法案』を実際に法律として実行すれば、日本だけでもその驚異から回避できると考えた。だがそんな法律を執行できる余地はなく、言わずもがな憲法9条という戦争禁止条例が待ったをかけのだ。そんな事をしなくても志願制の自衛隊がいるから大丈夫という意見も多数寄せられ、その法案はハッキリしなくともほとんど破棄状態になっている。その問題にあおいは黙っていられないのだ。
『あの計画を終わらせないで、今は穏やかじゃないの!』
『あおいちゃん、その計画って…?あぁっ!』
 きつねさんは宇宙の平和の為、3年に一度会議が開かれる『銀河宇宙六国平和同盟』の会員で、地球の統括理事を務めている。あおいだけがその事実を知っているが、バレたらすごく不都合な事なのだ。
『その事はここで言わないでって言ったじゃん、あんた大丈夫?』
『もうあの共産主義勢力は日本を標的に攻めてきたのよ、あれはただの墜落事故じゃないわ!』
 あおいの目はそれでこそ穏やかじゃなくなっていた。このまま急がねば混乱が生まれるとしてきつねさんを説得し始める。しかしきつねさんは強いられた表情で深く悩み、のちにあおいを叱った。
『そんな事、あなた達が何とかする事じゃないよ?仮にあおいちゃんが戦争を指揮したら、責任はあなたに降りかかる…そんな事煽っちゃダメよ!?』
 しかし、自分が調査した事を信じて疑わないあおいはきつねさんの言うことを聞かず、僕とシャーマンの方を指した!きつねさんはそれに唖然。
『まさかあの子達を巻きこむ気!?』
『そのつもりよ』
『あおいちゃん、今日は帰りなさい。』
 こうしてきつねさんの心配を押し切った果て、あおいもこれには異議も言えずお給仕を降りるのだった…一方の僕たちはメイドさんとのゲームを終えたところで、残ったドリンクを一滴残さず飲み干し家賃を差し出す。しかしそれから10分経って誰も回収に来ない。なんだろう…いつものバタバタかな?そうしてる間にシャーマンはため息をつくように呟いた。
『やっぱりナチス軍の事を聞き出したかったんだけど、ここじゃあ無理だったか…。』
んん!ナチス軍ってなに?という事はやっぱりここで詳しい事を聞きたかったんだな。だけど今、僕が聞きもしていない事を漏らしたぞ、この人!するときつねさんが目の前に来る。その事を知っているのか、申し訳なさそうな事を告げた。
『君たちがその事を気にしたら痛い目にあうよ、きっと。今日はごめんね…』
シャーマンもそれに潔く従うようにきつねさんへお詫びをつげる…一体どういう事情?
『こちらこそ何か期待したまま、来てしまいごめんなさい…もう帰ります。』
『とりあえずまた来てね…』
 最後はとても重苦しい雰囲気となり、きつねさんの見送りに僕たちは笑顔で答えつつ渋々エアガンショップへ場所を移した。さっきのナチス軍という発言にここ30分も疑問を思う。それが議題である『東亜日本航空123便“撃墜事件”』に結びついたのが今だった!プロ仕様のGLOCK18モデルガンを買い上げ、その考えついた事をシャーマンへ聞こうとした。
『シャーマンくん、まさかあれって撃墜……居ない!?』
シャーマンくんの姿が店内の何処にも無かった!慌てて外の街路へ飛びだすが居ない…。頭が真っ白になって、気がついたら銀座線の末広町駅にたどり着いていた。
『シャーマンくん、ひどいよ…ぐすん』
わけも分からず涙を流す、僕はいつもひどい目にあう。しかし後からこれは“裏切り行為ではない、むしろ協力だった”という事態へ引き込まれる序盤になっていくのだった。

 

ナチス


万世橋駅跡記念公園のプラットフォームで、身をかがめて無線機を握るシャーマンがいた。せっかく僕と買い物をしに来たのに、水を指した人をすこし怒っているようだ。
『あおいくん、後から話をつけるのはいいよ。だけど咄嗟すぎないか?』
『いい報せなのよ、政府も東亜日本航空も、撃墜されたっていうことを受け入れたわ!』
『…そうか、よかった!』
あおいというさっきのメイドと交信をして、重要な事を聞き入れた。この人は霧矢あおいのそっくりさんではなく、本物の霧矢あおいだった!
『今すぐ西多摩へ来なさい、いい事を教えてあげるわ!』
霧矢あおいは緊急の作戦会議を開くため、シャーマンを招集する。だが僕を置いてけぼりにした事を気にしたのか、それを渋るシャーマン。
『だけど、輝順君が…』
『あの子なら後で連れてくわ、心配は不要よ!』
『…ラジャー!』
と、シャーマンは承諾して秋葉原駅前に停めたオートバイを発進させる。西多摩の共同防衛本部基地へ向かった!時間は午後6時、10月の中頃でもう辺りは真っ暗だ。僕の自宅は門前仲町の商店街脇にあり、その近所の富岡八幡宮は僕のお庭。そこで突然居なくなったシャーマンの事を今川焼きをほおばりながら淡々と考えてしまい、今は少しイラついている。
『途中ですっぽかす奴なんて…』
 だけどふとラジオをつける。気を取り直して最新情報を入手しよう!
『〽︎ミラクル起こそう!めでたいたい♫幸花堂のたい焼き(CM)』
『東日航空機の事故ですが、先ほど特定軍事情報会社共同防衛は、ナチス軍と名乗るテロ集団が旅客機を撃墜したと発表しました。』
 あ、やっぱり撃墜事件だったんだ!だけどシャーマン君、ナチス軍の捜査に関わっていただなんて…僕は高揚感に耐えられず口に含んだ今川焼きを一気に飲み込んだ。だけど喉がつまり、酷くむせながら自販機まで駆け込む…
『なんて事だろう、シャーマン君は一体何をしたいんだろう…』
 水を一口すすりながら、地面に腰をついてあお向けに寝転ぶ。すると西の方からトラックが走るような轟音が響いた!
『キュラキュラ…ゴゴゴー…ブーン!』
 その轟音は段々と富岡八幡宮の方へ、音を響かせて行きそして姿を現す。61式戦車だ!車体を僕の方へ大きく転換して、高出力のハロゲンランプをパッと照らす。そして車体上部の扉が開くと、貫禄のある中年らしきおじさんが出てきた…
『横田照順くんは君か、迎えに来たよ!!』
『どうして僕の名前を知ってるんです?あなた誰なんですか…』
 いきなり戦車で驚かされた上、迎えに来たと言われても訳がわからない。怯えながらも警戒した!するとそのおじさんは決定的な事を僕に告げる。
『君のことは全部、おじいさんとシャーマンくんから聞いた。私と一緒に共同防衛本部へ行こう!』
 共同防衛は知っているけど、なんで僕が行かなきゃ行けない。しかし僕はシャーマンくんがそこに居ると、無条件に確信してしまう。沈黙を5秒置いたのち、大人しくこう告げた。
『分かりました、行きます!』
 こうして自分から車体をゆっくりよじ登り、戦車の中へ入る。おじさんはそのまま発動機を動かし、61式戦車富岡八幡宮の境内をゆっくり徐行して、門前仲町の大通りに差しかかった途端猛スピードで発進した!戦車は最高時速を90キロメートルまで上げ、西多摩郡の森の中に本社を置く軍事情報会社共同防衛へ、2時間かけて突き進む…戦車の車内で、その厳格そうなおじさんは、一瞬僕の方を見つめてこう名乗った。
『私は元自衛隊隊員、毛利憲三。君のおじいさんとは長い付き合いだ!』
 僕のおじいちゃんの友達なら、恐縮する必要はないと胸をなで下ろす。毛利さんはナチス軍と撃墜事件の事について詳しく教えてくれた!
『先月、日本政府はアメリカが提案した”資本経済同化連盟”に加盟したんだ。反資本主義の彼らは、それを動機にして攻撃をおっぱじめた!』
『なるほど…じゃあ皆さんはそれを探ったんですね?』
 原因不明と言われていたため、あえて検証したと前提してそれを問う。
『そうだよ、ステルス戦闘機で姿を消してやったんだ!』
『うそ、賢いなぁ…』
 真剣な表情を向けて断言した毛利さんに、すごい事だと渋々呆然する…こうして戦車は西多摩郡大自然の中へ入り、共同防衛本部に到着した。広大に大きい演習場へ入ると、そこにさっき@ピンクカフェにいた霧矢あおいらしき人とシャーマンくんが出迎えに来た!シャーマンくんは戦車へとっさによじ登り、ハッチを急いで引き開ける。
『照順くん、こんな事になってごめん!』
 突然いなくなったことを深く謝っているように思えるが、これは明らかに裏があったように話が進んでる…だけどシャーマンくんが僕をわざわざ、ここに呼び出したことは必要とされてると思い嬉しいよ。ここは素直にどうして呼び出したかと問おう!
『いいよ、だけどどうしてこうやって呼び出した?』
『こっちが素直に呼び出しても無理だと思うから!とにかく一緒に戦おう!』
『戦う!?なんで?』
 シャーマンくんは、冗談抜きでこう宣告する。それを促すように、あおいさんはシャーマンくんしか知らないはずの、僕の子供時代について問い始めた。
『照順くん、君は小さい頃…本当に頑張れると思う分野はあった?』
『いきなり僕の子供時代を聞き出されても、シャーマンくんから聞いたんですか?』
『うん。君はどうやらスポーツも、習い事もしないで、本ばかり読みに図書館で篭っていた少年だったらしいね。』
 確かに、僕は本を読むのが好き。だけど、やりたい事と言っても特に思いつかない!アニメやまんがは好きだけど、その作品に愛情を注ぐことはなかったし、スポーツで好きな物でも、ボートレースや競輪とかの公営ギャンブル競技にしか興味が湧かなかった。それで次々に自分がなりたい将来の理想を語る、まわりの友達のことを理解できないでいた。そのまま中学高校を卒業してから、社会情勢を知ろうと大学に進学したいとは思った。だけど自分には煌めくほど輝かせたい分野なんて全然ない。大学に行っても意味がないと思いながら、進学をやめて今の町工場で奴隷のように働き続けようと決めてしまったのである…。
『その通りです…僕は将来の夢なんて何もありません。』
 正直にこう告げると、あおいさんは真っ向に顔をしかめて思い切った言葉を投げつけた!
『だったら君はダメになるよ、絶対!』
 そう叫ぶと、あおいさんは自身のアイドルとして奮闘した経験とその戦友の思い出を語り始める…
『私はついこの間まで、アイドル活動を職業にしてたの。一緒に頑張ってきた友達にいちごっていう子がいて、その子も自分が本当になりたい理想なんてなかった。だけど私はこのままじゃあいちごは駄目になってしまう、私の大好きなアイドル活動を私がいちごと一緒にやれば、本当の自分に出会えるはずなんだと強く感じたの。シャーマン君もその気持ちは同じよ!』
 その話を聞くと僕は何もいうことが無くなった。そしてシャーマン君は、僕をこの様に呼び出した本当の想いを語り始める…
『あおい君の言った通りだよ!照順くんは頭が良い、それに効率のいい戦略だって考えるほど勘が鋭い!実は僕の敬愛する米軍のフレッダー・ハリソン大佐があの旅客機に乗っていたんだ。それも撃墜と同時に海に散ってしまって…だから今は、その仇を打つために少しばかりで良い、戦おう!』
 それで僕は小一時間瞑想を始めた…考えてみると、僕は軍人になれと言われている。軍人になれば、経験した事のない過酷な訓練、実戦となれば高い確率で死に堕ちる。だけどこの世界は不幸な事ばかり、まやかしのイスラム思想を掲げて罪のない国の住民たちを虐げるテロ集団・IS。平等かつ良識である人民が躍進する社会主義大国と自慢するが、その実態は平壌に家を持つ頭のいい知識人とその国に君臨する、太った将軍だけが明るい生活を独占し、その他の庶民はまるで見捨てられたかの様に無残な貧困生活を強いられている、事実上の封建国家・朝鮮民主主義人民共和国。瞑想するうちに僕の心の中は、『武力で打ち消せる悪もあれば、それで平和を取り戻せるのなら僕もやりたい!僕も悪を遮る壁になりたい、平和を導く聖者になりたい!』という気持ちで一杯になった…。こうして僕はシャーマン君と一緒に、軍人として戦う事で同意する。
『シャーマン君、僕、やる。戦うよ!』
『照順くん、そうか!やってくれるんだね!』
 その宣言に、心の底から喜ぶシャーマンくん。それを横で聞いていた毛利さんは、あおいが悩み続けていたあの議題『民間軍事特別徴兵法案』が秘密裏に計画が再開しているという事実を語った。
『そもそも偶然だったんだけど、民軍徴兵法の計画は今起きている、憲法改正運動の具体化によって同時に再始動した!やはり武力を全く持たないより、特定の機関で選ばれた民間人でも戦った方が国の護衛になるってね!』
『そうなんですか!?毛利さん…じゃあ、その法が執行する前にやっちゃうって事…』
 あおいさんが呆然と驚き、さりげなく毛利さんは事実だとうなずく。
『そうだよ?』
 という風に僕たちは言葉をぶつけ合っていた。その瞬間に本部基地の天辺にある大型ホーンスピーカが沈黙を2秒置いて、大音量のサイレンを鳴らし始める!
『宣戦布告警報、発令。宣戦布告警報、発令。』
『特定テロ組織ナチス軍の第3狙撃部隊が、佐世保米軍基地に向けて攻撃を仕掛ける。共同防衛の第6空軍部隊は米軍の応援に至急急行せよ!』
 あおいさん、シャーマンくん、毛利さんはそのサイレンに鋭い目つきで反応し、僕の方を集中して見つめる…そしてシャーマンくんはこう告げた!
『これが照順くんの、最初の戦闘だよ?』
 その次にあおいさんは余裕を示し、こう命令する。
『今から2分で作戦会議をするわよ?』
 そして毛利さんは佐世保がある南西の方に指を掲げる。思い切り声を張り上げ、大和魂がこもったこの言葉で戦いの始まりを告げた…!
『腕組め、戦いは始まっている!』

初めて銃を持ったその戦い


 共同防衛の第1会議室へ移動した…。米軍佐世保基地はどうやら海軍の第七艦隊が在籍する、自衛隊共用の軍事基地のようだ。会議を仕切るあおいさんは自前のコンピュータを高速で操作しながら、今からナチス軍に立ち向かう為の攻撃作戦を提案した!
『奴らの狙いは佐世保基地の主要施設、石油貯蔵タンクよ!私の推測で、ナチス軍らは確実にこのタンクを爆撃するわ。つまりナチス軍の力を見せつける、試験的な作戦ね…ということは航空機で奇襲する事だから、私たちも空中戦でやりましょ?』
 だがシャーマンくんは単純に空中戦で対抗すると攻撃できない箇所があることから、全面方向での作戦を持ちかける。
佐世保基地には艦隊を停めるための波止場が存在する。そこは僕の仲間たちがいる所だし、生き残っている隊員を集めれば地上からの攻撃ができる!あおいくん、それが良いだろう…』
『足止めも必要なのね、穏やかじゃないわ!』
 未経験の僕としては、攻撃戦略なんてやったことも無い…仮に勘がするどい僕が口を挟んでもゆるい事だと笑われるはずだ。ここは二人の意見に賛成して黙っておこう…。
『照順くん、君はどう言う作戦を提唱する?(シャーマン)』
『照順くん、あなたはどんな戦法が良いの?(あおい)』
 しかし二人は僕に期待しているのか、潤んだ目で意見を聞いてきた!だが燃料タンクと聞いたから、ダメ元で何も考えていないような勘で戦略を提案してみよう。
ナチスの狙いは破壊というより略奪かも知れません。もしこれが本当なら、燃料を輸送するためにタンクを持ってきています。むやみな攻撃は控えたほうが…』
 とは言ってみたが、どうだろう…シャーマンくんはそれを聞いて『うーん?』と顔をしかめる。だけど、あおいさんはそれもそうかも知れないと賛成するような表情を浮かべた!
『その手もあるかも、ただ攻撃するとは限らないことね!』
 そして毛利さんが会議室にやって来る、出撃命令を告げに来た!
『それでは、君たち。出撃の時間だ!』
 この戦闘の武運を願いながら、毛利さんは僕たちの顔を暑眼差しで眺める。やがて僕たちの名前を呼び、改めて作戦を任命する事を申し上げた!

『共同防衛・情報捜査上等兵、霧矢あおいくん』

『はい。』

『米軍兵士、シャーマン・ハリス・秋元』

『イエッサー!』

『そして共同防衛・新人二等兵、横田照順くん!』

『…はい!』

『君たちを対ナチス軍特別特攻部隊に任命する、出撃せよ!』

こうして僕達3人はいよいよ戦闘準備に入る。スタンバイルームに移動するとシャーマンくんは2分もしないうちに、頑丈なアメリカ軍の戦闘服に着替えてしまった。あおいさんの戦闘服は割と軽装で、頑丈な部分はヘルメットと胴体の辺りだけに見える!そして僕の戦闘服は…これはすごい!まずヘルメットと無線機が一体になっていて、暗中戦に使える赤外線可視ゴーグルが標準装備で付いている。そして僕の使う拳銃はグレー色のプラスチック製マシンガン、ステアーAUGライフルだ!そしてサブ装備はなぜか、グロック18ハンドガンにされている。もともと気に入っていた事をあおいさんか毛利さんが、シャーマンくんから聞いたのかな…?と、一瞬ボーッとすれば激しくど突かれる!シャーマンくんが50発ほどの銃弾を僕に渡す。
『油断をしたらこれほどの弾で殺されるよ?これを君に託すから、戦闘機に乗り込もう!』
『ありがとう、頑張ろうね。』
 こう告げたあと、僕とシャーマンはそれぞれ別々の戦闘機に振り分けられた。あおいさんに誘導され、目の前に停まっていた航空機は『F-2』。あおいさんは前方の操縦席へ搭乗するが、僕は何となく不安な表情を向けた。そこで彼女はちょっとした昔話を呟く…。
『照順くん、心配に思えたでしょ?』
『お、確かに…操縦できるんですか?』
『シュミレーターでなんども失敗したの。だけど失敗するほど、根気よくやる事を思い知ったから今はできるよ?早く乗ろう!』
 一方のシャーマンくんは、星条旗と日の丸が刻まれたバンダナを腕に引き締め、思い切った姿勢で『F-16』に目を射る。戦いの幸運を祈るべく、アメリカ合衆国の標語(スローガン)を呟くのだった。
『多数からひとつへ、我ら神を信ずる』

 午後11時45分、めっきり静まり返った夜中の西多摩。その森の真ん中から、地面がせり上がるように戦闘機の発進路が現れる!その中から発動機を勢いよく蒸し、飛び出すF-16の姿があった。それに続けて僕とあおいさんが乗るF-2も、発動機から火を吹いて飛び出していき、ナチス軍が待ち構える佐世保の基地へ消えて行った…。

『ハイルヒトラージーナチス!』
 米軍・佐世保基地。もう既に上空には戦闘機が5機留まっていて、そのうちの4機がナチス軍の陣営だ!1機だけ米軍の戦闘機が張り合っているがもう既に包囲されている…。撃ち落とされるのも時間の問題。そして地上の駐屯地を見ると、激しい銃撃戦が勃発していた!世界で一番強いはずのアメリカ軍は、得体の知れないテロ組織・ナチス軍による無慈悲な奇襲に苦戦を強いられていた…。そして佐世保の主要施設、石油燃料タンク入口付近には米軍の兵隊が1歩とも入らないように、2人の男女が鋭く目を凝らしマシンガンを構えていた!もちろん、2人ともナチスの陣営だ。
『ヴァレリヤ少佐、資本主義という愚かなるイデオロギーで世界全土を同化させようとした、アメリカの犬共に対し…我が”国家社会主義世界開拓同盟軍”が行った”極東攻撃作戦”は順調に進んでおります!』
『了解、だがアメ公どもの姿を見ると、一向に諦めていないように見える…』
 ヴァレリヤと名乗る黒髪のこの女性は、攻撃に押されているアメリカ兵の姿を気に留め、些細なことながらも顔をしかめた!隣で相手をする男子兵は、ヴァレリヤに銀装カステラを差し出しアメリカを思い切り侮辱する…。
『諦めたくないのはどこの国もそうです。しかしアメリカ大陸に住む、移民がほとんどの国民達は誰もが短気であります!自分達こそが世界の中心と豪語し、アーリア人の血を引く世界最高のドイツ民族の前でも食い下がることがまず無い、厄介な民族なのです…』
 ヴァレリヤ少佐はもらったカステラを、長い指だけで丸ごと口に放り込み、もぐもぐとよく噛みながらその光景を眺めた。
『資本の犬め…!』
 その隙を狙ったのか三人のアメリカ兵がヴァレリヤの側を包囲し、攻撃を試そうと銃を構えた!
『よくも誇り高きアメリカ人をバカにしたな…その燃料タンクは残念ながら返してもらう!』
 投げかけられたヴァレリヤは、アメリカ兵の反乱に対し真顔で警戒する。
『もし返さないと言ったら、何をする!?』
『こういう裁きだ!』
 と、3人がマシンガンの銃口を隙もなく、ヴァレリヤに集中させて思い切り打ち放った!アメリカ兵はこれで勝ったと確信するが、目の前にヴァレリヤの姿がなく彼女は足音を消して後ろへ回り込む。その瞬間にドイツ型手榴弾を投げ、アメリカ兵は爆風に散って玉砕してしまった…。
『優れた者に刃向かうからこうなるんだ…』
 華麗に攻撃を決めたヴァレリヤは直ぐに無線機を取り出し、ナチス軍が佐世保基地を制圧した事をアメリカ軍、ナチス軍問わず無差別に電波を飛ばし宣言する。その周波数は90.6MHz、長崎放送のチャンネルをジャックしていた!
ナチス軍の同胞達、アメリカの犬ども!そして平和ボケした日本人共へ告ぐ…まもなく、長崎の佐世保基地は我々ナチス支配下に入る。その序としてこの基地にある燃料等の資源は全て接収する!これでもアメ公と日本が諦めないというのなら、今度は長崎県庁を制圧してやるが…降参は今のうちだ。よぉく覚悟するように!』
 その放送聴いた佐世保の住人達は、恐るおそる米軍基地の方を向いて誰もが唖然した!実際にそこには銃声と爆発音がけたたましく響いていて、それに危機感を感じた長崎県警はやっとの決断でナチス軍を倒そうと試みた。パトカーで出動するにも非力すぎるので、機動隊40人を載せた2両の機動車両で佐世保基地の救援へ向かって行く…。一方の戦闘機に乗った僕たちは、今ちょうど山口県上空を通過して関門海峡のあたりに差し掛かっていた!
『霧矢、応答せよ。こちらシャーマン!現在の気象条件はかなり良好、そのためここからでも長崎の現状を確認できる。おそらく今はナチスの優勢、ここからは間も無く攻撃を仕掛けてくるので警戒せよ!』
 先陣を切って飛行するシャーマンくんは限りなく小さく見えている、佐世保基地の悲惨な状況に危機感を募らせる…。無線を受信したあおいさんは、その表情を声の震えで認識した!
『シャーマン、了解。くれぐれも冷静になって考えてね!』
 僕は凄まじい速さで飛んでいく戦闘機におびえながら、ずっと座席の脇にしがみついている…。あおいさんが心配するように、もう少し辛抱しろと優しく呼びかけるが…。
『照順くん、気分が悪くなったら我慢しないで出していいよ。もう少しだから!』
『敵軍がせめてきた、うあああっ!』
 僕が気づいたのはナチス軍の戦闘機、MIGー31が目の前で飛んでいる事だった!MIGー31は瞬時にミサイルを用意して、僕たちを撃ち落そうと狙いを定めた…。
『MIGー31よ。照順くん、ありがとう!』
 僕が悲鳴をあげた事で、あおいさんもこんな危機的状況に気づいた!無線でそのやり取りを聞いたシャーマンくん、あおいさんに指示をする余裕も無いと判断して、思い切り飛行機をまくり上げた。MIGー31の正面に尽きとめて、沈黙を置いたと油断をさせる…。
『やれる分だけ試みる!』
 MIGー31は隙もなく構えていたミサイルを発射した。ミサイルの矛先はシャーマンのF-16であるが、息を合わせたシャーマンは一か八かで交わして見せた!そのまま海に落ちたミサイルを眺める僕は、身の危険を感じるように弱音を吐く。
『僕はやっぱり自信がない、殺される!』
『MIGはまだ張り合ってるわ。シャーマン、攻撃しよう?』
 この先を切り抜けるために、あおいは反撃をしなくては行けないと反射的に叫んだ。
『あおいくん、照順くん。先に行ってくれ!ここは僕だけで片付ける…』
『仕方ないわね、くれぐれも生きててちょうだい!』
 やむおえずシャーマンくんに全て任せる事にした僕らは、その戦線から離脱!あおいさんは武運を願うしかなく、F-2を飛ばし続けた…。気がつくと佐世保上空あたりに入り、今度は古めかしいドイツの戦闘プロペラ機が待ち構えていた!
『警備をしてるつもりね、90年代の戦闘機をなめないで!』
 6機ほどのBf109がこっちの側に集ってくる!完全に包囲されたらしいが、あおいさんは諦める気配を出さずに攻撃を試みた。無差別に小型ミサイルを撒き散らすと、Bf109はそれを交わそうとする。しかし爆発すると爆風に飲まれてしまい、3機ほど半壊して市街へ落ちて行った…。
『やったぁ!照順くん、直ぐに基地へ突っ込むよ?』
『わかりました…戦いますよ。』
 攻撃に成功した事を、素直に喜んだあおいさん。まだ追っ手がいる事を気にかけている僕に、諦めてはいけないと思いをこめて投げかけた。直ぐにF-2は、佐世保基地にめがけて着地しようとする!一方の佐世保基地には、長崎県警の機動隊すらも苦戦している光景があった。米軍の兵隊は命を取り留めながらも、戦線離脱した人が大勢も救急車で運ばれている…。それを横にして、機動隊に包囲されても正気を保っている、ナチス軍少佐・ヴァレリヤ。
『君は包囲されている、大人しく撤退命令を宣告するんだ!』
『嫌だと言ったら?』
『構わん、打て!』
 仕方なく無条件に発砲を行う機動隊。だがその瞬間に真っ向から機動隊にめがけ、ヴァレリヤは力一杯殴りかかった!それも10人ほどの機動隊を相手に蹴散らしているから、よっぽど強い人だとわかる。しかし一息ついて空を見上げると、ついに僕たちの姿を目の当たりにした!
『なんだ、あいつらは…?』
 佐世保基地の目の前、佐世保川へ強引にも着陸に成功したF-2。あおいさんはコックピットのハッチを開けた直後に、ひどく揺られて放心状態になっていた僕に水を差し出す。初めての経験だから、もちろん気分が悪い…。
『長旅お疲れ!これはひどいね…』
 その側では未だ銃撃戦が行われているから、銃声が耳に突き刺さる!僕は耳をふさいだ。
『本当に激戦だ、でもシャーマンくんの約束なら!』
『そこのお前ら、自衛隊ではないな?誰だ!』
 直ぐ向かいの土手に、ヴァレリヤ少佐とナチス軍の陣営が現れる。その人たちは、今にも攻撃をしそうな表情で眼光をてらした!あおいさんは萎縮もせずに、素性を名乗り上げた。
『こんにちは、ナチス軍の皆さん?突飛な奇襲作戦、ご苦労さま。私たちは共同防衛の者よ!』
『共同防衛だと…?』
 もともと軍事関連の報道や、国家保安のインフラを仕切る会社だった共同防衛。ヴァレリヤ少佐はそんな企業が実戦を行うのは論外だと思いつつ、あおいさんの言う事を少しでも聞く姿勢をとった。
『民間企業だった私達だけど、民間軍事特別徴兵法案って言う条例を試すために…あなたたちを倒しに来たのよ!』
 自信を保ちこう公言するあおいさんに対し、ヴァレリヤ少佐は僕でも気づいていた、最大の突っ込みどころを思い切り投げるのだった!
『それはまだ、執行されてない事だろうがっ!』
『まだ違法だとしても、米軍を助けようとする行為は間違ってません。』
 しまった。つい我慢がゆるんでしまい、自分の意見を口に出してしまった!ヴァレリヤ少佐が僕を見る。
『もう一人のお前は誰だ?』
 仕方がない、ここは僕が説得して時間を費やす試みに出よう!
『名前は全部言えませんが、横田で覚えてください。あなたはアメリカの政策に賛同した日本に、怒りを覚えたからここを攻撃したんですね?』
『ああ、その通りだ!我がネオナチ筆頭、ナチス軍の理論からすれば甘えと不平等を引き起こす、資本主義は吐き気がする。なんせ、我々こそが世界一だからな?』
 しめた!うまく対話へ持ち込んだ事は正解か?このまま時間を奪って、相手を消耗させればもうこの惨状は免れるはず…。しかしあおいさんは、戦闘機の上に手榴弾が投げ込まれている事に気づいた!
『危ないっ、飛び込め!』
 いきなりあおいさんに抱えられ、佐世保川の真ん中へ死ぬ気で飛び込む。その途端、手榴弾によってF-2の機体は木っ端微塵に爆破されてしまった!
『照順くん、あんた何やってるの?』
『ごめんなさい。』
 うまく攻撃を仕留めたヴァレリヤ。足をバタバタさせて川に浮かぶ僕らは、その人の余裕そうな顔を見て危機感を感じた!
『私たちが対話を求めると思うか?ハイルヒトラー!』
『ハイルヒトラー!』
 佐世保基地の周辺でナチス軍の兵士は口を揃えて敬礼を叫ぶ!だがその後ろで密かにシャーマンくんが乗るF-16の姿が見えた。あおいさんが持っている無線機からも、シャーマンくんの声が鳴りひびく…。
『あおいくん、照順くん!応答せよ。シャーマンだ!』
『シャーマンくん!生きてたんだね…。』
 素直に喜んでいる僕だが、シャーマンくんは今の失敗にエールを交わす。
『照順くん、今の戦法は間違っていなかった。ただナチスの陣営が短気すぎただけの誤算にすぎない…』
『ありがとう、それで何か手を打つ事はある?』
 僕たちが勝つ手段はまだあるのか?降参しなきゃダメなのか、全部シャーマンくんに聞かないとわからない。あおいさんの瞳も不安でいっぱいだ!
『君はエアガンの射撃が上手いはず。そこの川からうまく基地に潜入して、ナチスの軍隊を一発で打つんだ!』
『一発!そんな…』
 あおいさんが背中を押して耳でささやく!
『できる、照順くんならやれるよ。』
『わかりました。』
 心を鬼にした僕は、シャーマンくんとあおいさんの応援に心から感謝を込め、ピースサインを掲げながら思い切り川の中へ潜っていった…。これが本当の、背水の陣!
『なんだ、よりにもよって自首するのか?』
 そんな行動に、ヴァレリヤ少佐は気づいていない様子で伺っている。そして後ろで飛んでいたシャーマンの気配に気づくと、生きていたMIGー31に追撃するように命令を下した!
『Fー16を撃墜せよ』
『アイム、シャーマンアキモト。グレートファイヤー!』
 シャーマンくんは勝利の女神を信じる勢いで、その攻撃をかわし続けていくのだった…。

初めての勝利に、朝日が昇る


 深い佐世保川を慎重に泳いでいき、ついに基地のフェンスによじ登れた。非力な体を力一杯振りしぼり、基地内を這いずり回り進んでいく…。周りの波止場には、多数の米軍艦がナチスの攻撃に耐えて、原型をとどめていた!それに気を止める隙もなく、淡々とヴァレリヤの背後を目指していく。そんな僕をそんな僕を熱い眼差しで見つめるアメリカ兵がいた!
『ヘイ、ジャパンボーイ!』
 いきなり呼びかけられ、ナチス軍に見つかったと思い込んで頭を抱える。
『うああ、無理だったか!』
『違う、俺はアメリカ兵だ!』
 そのアメリカ兵、僕に決定的な手段を教えてくれた!
『もし奴らを本当に打つんだったら、くれぐれもヴァレリヤは打つな!』
『…わかりました。』
 強くグットサインをかわして、僕は先へ進んでいく…途中で、数人のナチス兵を見つけて影に隠れた!このまま出たら打たれて死んでしまう…だけど先へ進みたい。以上に張りつめた状況に、後戻りはできないと察する!こうして捨て身で足を投げ出し、その広場を何も考えず駆けていく…。すると遂にヴァレリヤたちの背後が見えた!ここはよそ見も出来ない、油断もできない、なんの余裕もない。

 ステアーAUGライフルの安全バーを下げ、遂に僕は引き金を…引いたっ!

『ズガガガガッッッ!ババババッッ!』
 僕は5人ほど、ナチス兵の腕を打ち抜いたことを確認する。そしてナチス兵は、苦しみながら腕を思い切り抑え込む!反撃を試みてハンドガンを構えようとしたヴァレリヤだったが、彼女は表情を変える。冷酷な顔は一気に恐怖感に怯えるような表情に切り替え、泣き叫ぶように声を張り上げていった!
『あ、あ…ああああっ!』
 こうしてヴァレリヤは銃を大事そうに抱えながら、その戦線を放棄してBf109戦闘機に乗り込んで、東の方へ退避していった。その悲鳴を聞いた長崎県警機動隊と残りのアメリカ兵は、一気に巻き返しをはかり優勢に立っていたナチスの兵隊を打ち負かしていく!
『ヴァレリヤ少佐、まだまだだったんですか…私も退散します。』
 ヴァレリヤの隣にいた男性も、これには負けを認めるしかなくBf109の方へ走っていった。僕たちの勝利だ!
『照順くん、やったね!(あおい)』
『君を友達にして、本当に良かった。(シャーマン)』
 喜びに満ちた笑顔を見せながら、川から這い上がるあおいさん。僕の手を取り、勝利の握手をしてくれた!一方のシャーマンは、戦闘機を川の上に着地させて思い切り力を抜く。ホッとしているみたい…。
アメリカ軍横田基地、応答せよ。事態は免れた。』
 ナチスとの第一線を勝利で終えた僕らの前に、広大な佐世保湾から朝日が昇っていく。その横であおいさんも、まるで古い友達を思い出しているかのように、温かい眼差しでそれを見ていた…。

『覚えてろ…今度はぶちのめす、このヴァレリヤが!』
 しかし彼女は、次の戦闘作戦を考えるべく暗躍を示す…。そうすると、コンピュータを操作して秋田県の方角を調べ始めた…。

もう一つの民間軍事会社


ナチス軍と名乗るテロ組織が、共同防衛とかいう通信社に負かされただって?わかった。』
 眼鏡をかけた一人の青年が受話器を置く。
『困るんだよなぁ、新しいところがやってもらっちゃうと。』
『提督。ここは力を見せつけるために、”競合”したほうが良いんじゃないんですか?』
 艦隊の能力を身につけた、とある少女が彼に問う。しかしその青年は深く沈黙してナチス軍のニュースを見つめる!
『競合したら戦争状態になりかねない!』
 しかしその少女はプライドという信念を提案して、大丈夫だと説得する。
『元祖民間軍事会社として、試しに先手を打ちましょう!』
『仕方ないな、我々は寺衷防衛軍者だ。』
 青年は共同防衛より先に設立された、軍事会社の上層部らしい…。すぐに共同防衛と検索をかけて、隅から隅まで調べていく。
『これはすごいな!』
 するとまたベルが鳴り、一息ついて電話に出る。それは驚くべき”チャンス”だった。
ナチス軍がそっちに来る、了解!』
『どうやら秋田総合駐屯基地へ向かってくるそうだ!』
 ナチス軍のヴァレリヤが向かっている知らせだった。艦隊娘は出撃できると慌てて部屋を出ようとするが、提督が少し呼び止め、『グットラック!』と笑顔で挨拶を交わした…。

クルセイダーウォーズ 第一話『腕組め!戦いは始まっている!』 終

おまけ


 たい焼きの被り物をした、赤髪のアイドル・ローラが道を歩いていた。その横で銀装カステラを美味しそうに食べている、大洗女学園の生徒。それをしゃくに触れたのかいきなり大声で呼びかけるローラ!
『おいっ!』
『中身のないものを食べて、そんなに嬉しいか?中身をつくりたきゃ、たい焼きも食べろ!』
 と叫んで右手にたい焼きを突き出し、たい焼きがたくさん入った箱を置いて、そのままゆっくり立ち去っていった…。
『何?あの人…。』
 以上、華花堂のCMでした。